薬剤師のとだ先生こんにちは、薬剤師のとだです。
昔からよく「DHAは脳に良い」と聞くことがあると思います。
でも、なぜそう言われるのか、科学的な根拠がどこまであるのか、疑問に思ったことはありませんか?
この記事では、DHAと脳の関係について 3つの視点 から解説していきます。
この記事の「結論」!!
- DHAは脳や神経細胞に多く含まれる必須脂肪酸である
- 神経伝達をスムーズにし、炎症や酸化から脳を守る働きがある
- 高齢者の認知機能維持から子どもの発達まで、多くの研究で効果が報告されている
1.DHAとはそもそも何?
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、青魚に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」のひとつです。
人の体ではほとんど作れない必須脂肪酸のため、食事やサプリメントからの摂取が欠かせません。
特に注目すべきはその分布です。DHAは脳や網膜といった神経系に多く含まれ、細胞膜の柔らかさや情報の伝わりやすさに関わっています(※1)。つまり、DHAは「脳の神経細胞の材料」として欠かせない存在なのです。
下図)DHA(ドコサヘキサエン酸)の化学構造式


2.なぜ脳に良いといわれているのか
脳の約60%は脂質でできており、その中でDHAは重要な役割を担っています。
DHAがしっかりあると、神経細胞の膜が柔らかく保たれ、情報伝達がスムーズに行われます。これが「記憶力や学習能力を支える」といわれる理由です(※2)。
さらに、DHAには炎症や酸化ストレスから細胞を守る働きもあります。脳は酸化の影響を受けやすい臓器のため、DHAがあることで神経のダメージが抑えられると考えられています(※3)。
このことから「脳の老化や認知機能の低下を防ぐ助けになるかもしれない」と期待されているのです。
3.具体的なエビデンス(研究結果)
実際に研究ではどのような成果が出ているのでしょうか?
- 高齢者の認知機能
DHAを補うことで、加齢に伴う物忘れや認知機能の低下が緩やかになる可能性が報告されています(※4)。 - アルツハイマー病リスク
アメリカの大規模研究では、血液中のDHAが高い人はアルツハイマー病の発症リスクが低い傾向があると示されています(※5)。 - 子どもの発達
妊娠中や乳児期にDHAをしっかり摂った場合、子どもの認知発達や視力の成長にプラスの影響を与えるという報告もあります(※6)。
このように、年代を問わず「脳の健康」と関わる研究が積み重ねられてきています。
参考論文
※1 Stillwell W, Wassall SR. Docosahexaenoic acid: membrane properties of a unique fatty acid. Chem Phys Lipids. 2003;126(1):1-27.
※2 Calder PC. Omega-3 fatty acids and inflammatory processes: from molecules to man. Biochem Soc Trans. 2017;45(5):1105-1115.
※3 Bazan NG. Cell survival matters: docosahexaenoic acid signaling, neuroprotection and photoreceptors. Trends Neurosci. 2006;29(5):263-271.
※4 Yurko-Mauro K, et al. Beneficial effects of docosahexaenoic acid on cognition in age-related cognitive decline. Alzheimers Dement. 2010;6(6):456-464.
※5 Schaefer EJ, et al. Plasma phosphatidylcholine docosahexaenoic acid content and risk of dementia and Alzheimer disease. Arch Neurol. 2006;63(11):1545-1550.
※6 Lauritzen L, et al. The essentiality of long chain n−3 fatty acids in relation to development and function of the brain and retina. Prog Lipid Res. 2001;40(1-2):1-94.












