DHAと妊婦の健康 ― 薬剤師が解説！

１．DHAとはそもそも何？

DHA（ドコサヘキサエン酸）は、青魚やクリルオイル、藻類に含まれるオメガ3系脂肪酸のひとつです。
体内でほとんど合成できず、食事またはサプリメントから摂る必要があります。
DHAは特に脳・網膜・神経細胞膜に多く存在し、神経伝達をスムーズにする働きを持ちます（※1）。

２．なぜ妊娠中に重要なのか

① 胎児の脳と神経の発達

妊娠後期から胎児の脳では急速に神経細胞の形成が進みます。
このときDHAは細胞膜の柔軟性や情報伝達を支える“材料”として欠かせません（※2）。
DHAが不足すると、神経伝達の効率低下や視覚発達の遅れにつながる可能性があることが報告されています。

② 視覚機能の発達

網膜にもDHAが高濃度に存在し、視覚の発達に深く関与しています。
妊娠中や授乳期に母体のDHA摂取量が十分であると、乳児の視力・知覚スコアが高いという研究報告があります（※3,4）。

③ 母体のメンタルサポート

DHAはセロトニン代謝や炎症抑制に関与し、産後うつのリスク軽減にも寄与する可能性が示されています（※5,6）。
妊娠中からのDHA摂取が、母体のメンタルヘルスを守るうえでも役立つと考えられています。質を整える」働きを持つことが確認されています。

３．具体的なエビデンス（研究結果）

胎児の発達と母体DHA濃度の関係
Hibbelnら（※2）は、妊婦のDHA摂取量が多いほど、出生児の認知・運動発達スコアが高いと報告。

乳児の視覚発達
Birchら（※3）は、母乳中DHA濃度が高い群の乳児で、網膜感度と視覚応答が優れていたと報告。

妊婦へのDHA補給試験
Carlsonら（※4）のランダム化比較試験では、妊娠中に600mg/日のDHAを補給した群の乳児が、認知発達テストで有意に高得点を示した。

母体メンタルへの影響
Su KPら（※5）は、DHA・EPAの補給が産後うつ症状を軽減したと報告。
Makridesら（※6）は、DHA補給で情緒安定が得られる可能性を示唆している。継続することで、血液の脂質バランスが少しずつ整っていきます。

4．摂取量と安全性

国際的な推奨では、妊婦・授乳婦はDHA+EPAで200〜300mg/日以上の摂取が推奨されています（※7）。
魚介類からの摂取が理想ですが、匂いや水銀などを避けたい場合は、クリルオイルサプリメントも安全な選択肢です。
また、妊娠期のビタミンDや葉酸との併用は、胎児発達をさらにサポートします。

5．まとめ

DHAは胎児の脳や視覚の発達に欠かせない栄養素であり、母体のメンタルや健康維持にも役立ちます。
特に妊娠後期から授乳期にかけては、体内のDHA需要が高まるため、日々の食事やサプリでの補給が大切です。
青魚が苦手な方は、クリルオイルサプリメントを活用して、安全にDHAを摂りましょう。