薬剤師のとだ先生こんにちは、薬剤師のとだです。
クリルオイルという言葉は、DHA・EPAを意識している方なら一度は耳にしたことがあるかもしれません。
ただ、「クリルとは何か?」と聞かれると、詳しく説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、クリルという生き物の生態に目を向けながら、
なぜクリル由来の脂質が注目されているのかを考えていきます。
この記事の「結論」!!
1.クリルは南極海の生態系を支える、極めて重要な生き物
2.寒冷環境に適応するため、特殊な脂質構造を持っている
3.脂質の性質が、人の体と相性の良いオメガ3につながっている
1.クリルは南極海の「要」となる存在
クリルとは、南極海に大量に生息する小型の甲殻類です。
見た目はエビに似ていますが、体長は数センチほどと非常に小さく、群れをなして海中を漂うように生活しています。
しかし、その存在感は決して小さくありません。
南極の海では、クジラ、アザラシ、ペンギン、魚類など、多くの大型生物がクリルを主な食料としています。(※1)
つまりクリルは、南極海の食物連鎖の中心を担う存在です。


このような生態的役割から、クリルは「南極生態系の基盤」とも表現されます。(※1)
2.極寒の環境が生んだ、独特な脂質構造
南極海は、年間を通して水温が非常に低い過酷な環境です。
こうした環境で生きるために、クリルの体には独特の適応が見られます。
その一つが、脂質の持ち方です。
低温下では、細胞膜が硬くなりやすく、生命活動に支障が出やすくなります。
それを防ぐため、クリルは流動性の高い脂質を多く体内に持つ必要があります。
実際、クリルの脂質組成を調べた研究では、
DHA・EPAなどの高度不飽和脂肪酸が、リン脂質と結びついた形で多く存在することが報告されています(※2)。


この脂質構造は、
単なるエネルギー貯蔵ではなく、
細胞膜の柔軟性を保つための適応と考えられています(※2)。
3.生態がそのまま「体になじみやすさ」につながる
リン脂質は、人の体においても
細胞膜を構成する基本的な成分です。
DHAは特に、
神経細胞や網膜など、膜の柔軟性が重要な組織に多く存在する脂肪酸として知られています(※3)。


つまり、
クリルが極寒の海で生き抜くために獲得した脂質構造は、
偶然ではなく、人の体がもともと利用している脂質構造と非常に近いものなのです。
このことから、クリル由来のオメガ3が
「体になじみやすい」「利用されやすい」と評価される背景には、
クリルという生き物の生態そのものがあると考えられます。
参考論文
※1 Atkinson A, et al. Krill (Euphausia superba) distribution, abundance and ecology. Progress in Oceanography. 2009.
※2 Phleger CF, Nichols PD. Lipid composition of Antarctic krill. Comparative Biochemistry and Physiology Part B. 2001.
※3 Stillwell W, Wassall SR. Docosahexaenoic acid and membrane properties. Chemistry and Physics of Lipids. 2003.













